四国四県に点在する、八十八ヵ所の弘法大師(空海)ゆかりのお寺を巡礼することを「お遍路」といいます。
四国の人々は、巡礼者のことを親しみをこめて「お遍路さん」と呼び、昔からお遍路さんに親切で道を尋ねると笑顔で丁寧に答えてくれます。
また、見知らぬ人からの飲食物や気持ちなどの「お接待」を受けることがありますが、その行為に対してまったく見返りを期待していないことに驚かされます。
へんろ道文化とは「お接待」の文化なのです。
年間30万人を超えるお遍路さんが、それぞれの思いと共に、約1,200kmの道程を巡っています。
お遍路の目的とは何ですか? | |
大きく3つに分けることができると思います。 一つ目は「追善供養」です。今は亡き人の冥福を願って巡礼をするというものです。 二つ目は「予修供養」です。自らが生前に、あらかじめ死後の冥福を祈るためのものです。 三つ目は、いわゆる「自分探し」ともいわれ、信仰的な発心よりも、癒し、リフレッシュを目的とした巡礼者が増えたといわれています。 四国の方々の優しさや、豊かな大自然が、それに適した環境であることは言うまでもありません。 |
お遍路は、誰が最初に廻り始めたのでしょうか? | |
諸説ありますが、伊予国の豪族「衛門三郎」が始まりといわれています。 強欲な長者の三郎は、ある日、托鉢に来た僧を邪険にしたため、その翌日から8人の子供が次々と死んでしまいました。 後に、その僧が弘法大師であったことを知り、深く反省した三郎は、大師を追いかけて八十八ヵ所を巡りました。 20回巡礼を重ねましたが大師に会えず、なんとしても会いたい一心から、今度は逆から廻ることにして、やっと大師に会えたのです。 三郎は今までの非を泣いて詫び、息を引き取ったといわれています。 |
へんろ道とは? | |
四国霊場を開いたとされる弘法大師(空海)の修行の跡を辿って、平安時代末頃から真言宗の僧が修行のため、四国を巡礼するようになり、 四国巡礼が確立されるに従って、現在のように四国霊場を結ぶ経路ができていったと考えられています。 厳しい登りのへんろ道は、お遍路さんをころげ落とすような道という意味で「遍路ころがし」と呼ばれています。 「へんろみち保存協力会」をはじめとした団体や地元自治体の皆さんの御協力により、本来のへんろ道の復元作業が進められています。 |
お遍路をするには、どういう方法がありますか? | |
全てを徒歩で廻る「歩き遍路」、大型観光バスなどによる団体巡礼で廻る「バス遍路」、自家用車で廻る「車遍路」、 大きく分けて3つの方法がありますが、それ以外にも「自転車」「電車、バスなどの公共交通機関」 「タクシー」などを利用して廻る方法もあります。 お遍路人口は定かではありませんが、年間30万人(うち歩き遍路が5000人)ともいわれています。 |
信仰心がないのですが、大丈夫でしょうか? 宗派が違うのですが、お遍路をしてもよいのでしょうか? |
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お遍路は決して信仰心の有無や宗派にはこだわっていないので、心をこめて拝むことができれば大丈夫です。 ただし、四国霊場での巡拝方法やしきたり、読経の作法など基本的なことは覚えておいたほうが良いでしょう。 |
お遍路の心得とは? | |
十善戒といって、十種の善行(十善)を守らなければなりません。 不殺生(ふせっしょう)・・・いろいろな生き物を殺しません 不偸盗(ふちゅうとう)・・・物を盗みません 不邪淫(ふじゃいん)・・・みだらな男女の関係をもちません 不妄語(ふもうご)・・・嘘や本当でないことはいいません 不綺語(ふきご)・・・必要以上に褒める言葉や、たわ言をいいません 不悪口(ふあっく)・・・人の悪口をいいません 不両舌(ふりょうぜつ)・・・二枚舌を使いません 不慳貪(ふけんどん)・・・ものを慳みよくばりません 不瞋恚(ふしんに)・・・いかり憎むことをしません 不邪見(ふじゃけん)・・・まちがった考え方をしません |
お参りの作法がわからないのですが…。 | |
お寺での巡拝方法は、以下の通りです。 山門にて合掌し、一礼する 水屋にて、手と口を清める 鐘楼堂にて、鐘をつく 本堂にて、線香、ローソク、納め札、お賽銭を御供えする 仏前勤行次第に従い、お勤めをする 開経偈(かいきょうげ) 懺悔文(ざんげもん) 三帰(さんき) 三竟(さんきょう) 十善戒(じゅうぜんかい) 発菩提心真言(ほつぼだいしんごん) 三摩耶戒真言(さんまやかいしんごん) 般若心経(はんにゃしんぎょう) 御本尊真言(ごほんぞんしんごん) 光明真言(こうみょうしんごん) 御宝号(ごほうごう) 回向文(えこうもん) 最後に願い事を祈願します。 大師堂にて、同じ要領でお参りする 納経所にて、ご朱印をいただく (有料) 山門にて合掌し、一礼する その他、お遍路のしきたりとしては、「橋の上ではお杖をつかない」「お宿についたら先ず、金剛杖を洗う」「巡礼中トイレなど不浄なところには、決して杖、笠、さんや袋、数珠、輪袈裟等を持ち込まない」というような大事な決まりがあります。 |
お遍路の旅に、最低限必要な巡礼用品とは何ですか? | |
「納札、納経帳、経本、念珠があれば十分」と紹介しているところもありますが、せっかくの機会ですから、 それに加え、「白衣」「輪袈裟」「金剛杖」「菅笠」を、オススメしています。 白衣と輪袈裟だけなら荷物にもなりません。それに加え金剛杖があれば、階段や坂の上り下りが楽になります。 菅笠を被れば、これであなたもお遍路さんです。 インターネットで購入する場合は、現地よりも1割くらい安く購入することができます。 |
お遍路の費用は、一体どれくらいかかりますか? | |
お遍路人口で最も多い大手のバスツアーでは、日帰りで3,000円~4,000円程度のツアーがあります。 結願までは12回程度の区切り打ちになり、一通り続けると20~30万円くらいの費用がかかります。 一方、歩き遍路は、通しで歩くと約45日程度かかり、費用は1日1万円かかると言われています。 また、お参りの際に必要なものは、「お賽銭」と「納経代金」です。 納経とは、文字通り「経」を「納める」ということで、お参りしたときに写経や納め札を納めて、その 「受け取り証」として納経帳や持参の白衣、掛け軸などにに朱印を頂くことです。 納経代金はそれぞれ、納経帳 300円、白衣 200円、掛け軸 500円となります。 (納経は、必ずしなければならないものではありません。) |
お接待とは何ですか? | |
遍路をしていると、地元の方々から、食べ物やお賽銭をいただくことがあります。これを「お接待」と言います。 四国遍路における「お接待」は、基本的に無償の行為であり、こうしたお接待を受けた場合、基本的には、断ってはいけないことになっています。 お接待の意味合いとしては2種類あり、一つは、「弱者」に対する支援であっていわゆる「施し」です。 もう一つは、「自分自身の代わりにお大師様にお参りしてほしい」という意味での賽銭の寄託なのです。 お接待を頂いたら合掌して「南無大師遍照金剛」を3回唱え、自分の納札を1枚差し上げます。 納札は、札所に納めるもの以外に多少の余分をもって、すぐに取り出しやすいところに入れておきましょう。 ※お接待は期待してはいけません。 |
白衣や金剛杖に書かれている『南無大師遍照金剛』とは、どういう意味ですか? | |
『南無大師遍照金剛』は意味として、「南無」「大師」「遍照金剛」と3つに分けることができます。 「南無」とは南無阿弥陀仏の「南無」で 「・・・に帰依する」という意味であり、「大師」とは「弘法大師」の意味です。 「遍照金剛」とは弘法大師が唐のお寺で師僧より灌頂名として授かった名前で、『あまねく一切を照らす最上の者』という意味です。 つまり、『弘法大師の教えを信じ、身を任せます。』という意味になるのです。 |
同行二人の意味は? | |
「お大師様(弘法大師)がいつも一緒にいて、あなたを護ってくれる」という意味です。 四国遍路において、金剛杖は「弘法大師」の化身としての役割を持つとされており、金剛杖を持って巡拝することは、お大師様(弘法大師)とともに歩くということなのです。 |
笠に書かれている文字の意味とは? | |
笠には『迷故三界城 悟故十方空 本来無東西 何処有南北』 と書かれており、「迷うがゆえに三界は城なり、悟るが故に十方は空なり、本来東西はなく、何処んぞ南北あらんや」といい、意味としては、「迷っているが故に、私達を取り巻く環境は、まるで堅固な城郭に閉じ込められているかのような圧迫感がある。 その迷いを突き抜けて悟ってみれば、もう十方世界は、大空と同じように自由で伸び伸びとしている。」ということです。 |
歩き遍路の場合、道に迷わないか心配なんですが…。 | |
へんろ道には分かれ道など至るところに、遍路シールや道しるべ札が設置されております。 万が一、道に迷っても、お四国の方々が優しく道を教えてくれますので心配は要りません。 へんろ道保存協力会が発行する「四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編)」は見やすくわかりやすいので、歩き遍路をしようとする人にとっては便利です。 |
お遍路は、必ず第一番札所から廻らなければなりませんか? | |
お遍路は、順番どおりに必ず巡らなければならないという訳ではありません。 お住まいの場所やご都合により、どこから始められても構いません。 |
八十八ヵ所を一度に廻るほうが、値打ちがあるのでしょうか? | |
そんなことはありません。巡り方は人それぞれですので、自身の生活やペースに合わせて計画して巡る事をオススメします。 1度の旅で、八十八ヵ所のすべてを巡ることを「通し打ち」といいます。 何回かに分けて巡ることは「区切り打ち」と言われ、バスツアーなどでは、日帰りや1泊2日の区切り打ちが多いようです。 阿波(徳島)、土佐(高知)、伊予(愛媛)、讃岐(香川)など、ひとつの国単位で巡拝する場合は「一国打ち」という言い方をします。 また、1番札所から2番、3番と札所の番号順に巡拝ルートを時計周りに巡る(打つ)ことは「順打ち」と呼ばれ、それとは逆に、88番札所から87番、86番と巡拝する方法を「逆打ち」といいます。 逆打ちは、順打ちよりも歩きにくく厳しいといわれており、逆打ちで歩くと、順打ちで巡拝している弘法大師とすれ違うという謂れがあり、3倍のご利益があるといわれています。 |